イユラ・ウォッシングステーションで精製されたこのロットは、CPU(コーヒー・プロセッシング・ユニット)と呼ばれる共同精選所で丁寧に仕上げられたものです。家庭規模で行われるホームプロセスとは異なり、CPUでは管理の行き届いた環境で一貫した品質が保たれています。そのため、毎年安定したクリーンカップが期待できる銘柄のひとつです。
イユラでは、輸出業者と連携しながら農家への技術指導にも力を入れており、持続可能な農業の実現に向けた取り組みも進んでいます。現在は、土壌の特性を理解し、最適な肥料の使用につなげる活動が行われており、長期的な品質向上と環境保全の両立を目指しています。
特筆すべきは、タンザニアでは珍しい「ソーキング(浸漬)」工程を取り入れている点。これは、ドライファーメンテーション後に再度水に漬けてから天日乾燥を行うもので、クリーンで澄んだ味わいを引き出す効果があるとされています。ケニアなど一部の国では見られる手法ですが、タンザニアでこれを実践しているウォッシングステーションはごくわずかで、品質への強いこだわりが感じられます。
このロットは、チェリーの搬入から乾燥に至るまで緻密な工程で管理されています。午後に農家から届けられたチェリーは、夜通しパルパーにかけられ、比重選別、ドライファーメンテーション、水洗を経て、8〜12時間のソーキング後、9〜14日間アフリカンベッドでじっくりと乾燥されます。
丁寧な精製と品質管理が生んだ、タンザニアらしさの中に繊細なクリーンさを併せ持つ一杯です。
中深煎りのイユラと飲み比べるのも面白いです。
地域:タンザニア南部ンボジ ソンウェ
農園:イユラ
標高:平均1700m
品種:N39、KP423
精製方法:ウォッシュト
風味:カシス、オレンジ、ぶどう
焙煎:浅煎り